神代の時代(高天原のストーリーまとめ)の続きです。
この記事のあらすじ
高天原で乱暴狼藉の末に地上に追放されたスサノオ。その子孫が地上を統治しアマテラスへ地上の支配権を献上するまでのストーリー
神代の時代から人の時代へ紡がれるストーリー。天皇がなぜ日本の統治者として君臨しているのかを知るため古事記の上巻をみていきます。
スサノオのヤマタノオロチ退治
高天原で乱暴狼藉の末に地上の世界に追放されたスサノオは出雲国へ降り立ちます。
そこで泣いている老夫婦のアシナヅチとテナヅチと出会う。スサノオは老夫婦になぜ泣いているのか理由と尋ねると「ヤマタノオロチが毎年やってきて娘を食べてしまうのです」と答えた。
アシナヅチとテナヅチの間には八人の娘が居たがすでに七人の娘が犠牲になっており、今年は最後の娘『クシナダヒメ』が犠牲になる年。
”ヤマタノオロチは八つの頭と八本の尾を持ち八つの谷や山の尾根を越える巨大な蛇の化け物”
老夫婦はスサノオに娘のクシナダヒメを紹介する。するとスサノオはクシナダヒメの美しさに惹かれヤマタノオロチに食わせるのは惜しいと思い老夫婦にヤマタノオロチを退治する代わりにクシナダヒメを嫁に欲しいと言う。
初めは渋った老夫婦ですがスサノオがアマテラスの弟であることを知ると是非に嫁にもらって欲しいと願い出るようになる。
・板垣をめぐらし八つの入り口を作る
・それぞれの入り口には濃度の高い酒を準備する
・クシナダヒメが見つからないように櫛に姿を変える
ヤマタノオロチはスサノオの準備した酒を飲み酔い潰れてしまう。
スサノオはヤマタノオロチが酔い潰れ寝ている間に首を落とし体を切り刻み勝利。
ヤマタノオロチの尾からは後に三種の神器となる草薙剣が見つかる。
スサノオはヤマタノオロチを退治した後約束通りクシナダヒメを嫁にもらい子をなしていく。スサノオは多くの子孫を残し母の居る黄泉の国へ旅立つ。
そして、スサノオの残したたくさんの子孫の中に地上の世界の支配者たるオオクニヌシが誕生。古事記での主役は以後、スサノオの子孫のオオクニヌシとなっていく。
ヤマタノオロチから現れた草薙剣はアマテラスへ献上され八咫鏡、八尺瓊勾玉と合わせ三種の神器とされ天皇皇位継承の儀式に用いられるようになる。
因幡の白兎
スサノオの子孫のひとりにオオナムチ(後にオオクニヌシと名乗るようになる)という男神がいた。
オオナムチはスサノオの6代目の子孫で八十神(たくさんの神という意味)の異母兄弟いる。
ある日、オオナムチの兄たちは因幡(稲羽)国に美しいと評判のヒメがいるという噂を聞く。
すると、兄たちはヤカミヒメに求婚するため出雲から因幡へ旅立つ。兄たちは末っ子のオオナムチを見下しており道中の荷物持ちを命じる。
重い荷物を担ぎながら因幡へ向かっている途中オオナムチは一羽のウサギに出会う。
そのウサギは皮を剥がれ体を真っ赤にし泣き喚いていた。
オオナムチがどうしたのか尋ねるとウサギは「ワニを騙して海を渡ろうとしたが渡っている途中で嘘がバレてしまい毛皮を剥がれた」と答える。
さらに、オオナムチより先行していた八十神たちに「海水を浴びて風にあたれば治る」と言われその通りにしたら体は真っ赤に腫れ上がり痛みも増してきてどうしようもないと泣きながら話した。
オオナムチは兄たちの非道を謝罪し、「真水で体を洗い蒲の穂の上に寝るように」と」正しい処置の仕方を教える。助言に従ったウサギは傷が癒えたことに大喜びする。
傷が癒えたウサギの様子を見たオオナムチは兄たちの後を追いヤカミヒメに会いにいくため旅だとうとする。
するとウサギは「ヤカミヒメが夫に選ぶのは兄たちではなく貴方様であろう」と予言を告げる。
その予言は的中しヤカミヒメはオオナムチを夫に選んだ。
八十神の嫉妬/オオナムチの死
ヤカミヒメに選ばれたオオナムチは兄たちから嫉妬され二度殺されることになる。
一度目は、伯耆の手間の山までオオナムチを誘い出し赤い猪がいるからその猪を狩ろうと嘘をつく。兄たちは真っ赤に焼けた石を山の上から落としオオナムチを焼き殺した。
しかし、オオナムチは復活することになり兄たちは再びオオナムチを殺そうとする。
そして、二度目は大木の裂け目にオオナムチを押し込んで殺害する。ここでもオオナムチは復活した。
オオナムチを復活させたのは哀れに思ったオオナムチの母神サシクニワカヒメだった。
オオナムチが一度目に殺された時はサシクニワカヒメが高天原にいるカムムスヒに助けを求めた。その願いに応えカムムスヒがキサカイヒメとウムカイヒメを向かわせ治療し生き返らせる。
二度目はサシクニワカヒメ自ら生き返らせ紀伊の国に住むイザナギの子であるオオヤビコのもとへ逃げるように告げる。。
オオナムチは母の助言の通りに紀伊の国へ逃げるが兄たちは諦めず追ってくる。
オオヤビコのもとへ逃げたオオナムチだが兄たちに追い詰められオオヤビコの手引きで地下の根の堅洲国へ逃げることができた。
根の堅洲国はヤマタノオロチを退治した後、スサノオが母に会うために旅立った国でその時点ではスサノオが治める国であった。
オオナムチは根の堅洲国で先祖であるスサノオとその娘スセリビメと出会うことになる。
スサノオとスセリビメとの出会い
兄たちから逃げるため根の堅洲国へ向かうオオナムチ。無事に根の堅洲国へ逃げることができたオオナムチはスセリビメというスサノオの娘に出会う。
オオナムチとスセリビメは出会った瞬間に恋に落ちる。その様子をみたスサノオは娘のスセリビメの相手に相応しいか見定めるためオオナムチに試練を与える。
・最初の試練はたくさんの蛇が這い回る岩屋に閉じ込められ一晩を過ごさせる
・第二の試練はムカデと蜂がたくさんいる岩屋に閉じ込められ同じく一晩過ごさせる
第一、第二の試練はスセリビメがくれた布を使いスサノオの試練をくぐりぬけることに成功する。
第三の試練は野原でスサノオが放った鏑矢を探すように命じられる。スサノオは野原に火を放ちスサノオが放った鏑矢を探していたオオナムチは周囲を火に囲まれてしまう。
第三の試練はネズミが落とし穴に案内し火をやり過ごす。スサノオの放った鏑矢もネズミが見つけ出し試練は成功する。
最後の試練はスサノオはシラミがいて頭が痒いからシラミをとってくれと嘘をつき頭に這い回るムカデを取らせようと命じる。
最後の試練は、スセリビメから渡された椋の実と赤土でムカデを噛み砕いているように見せかけた。
オオナムチがムカデを取っていると見せかけているうちにスサノオは寝てしまう。
スサノオが油断して寝ている隙にスサノオの髪を木に結びつけ追って来れないようにし戸口を岩で閉めスセリビメと共に地上の世界へ逃げ出す。逃げる際にスセリビメが持ってきたスサノオの太刀と弓矢、天の沼琴を持ち去る。
騙されたことに気づいたスサノオであったがスセリビメとの関係を認める。そして「お前が持って行った太刀と弓矢はくれてやる。それで地上の兄たちを追い払いオオクニヌシと名を改めて葦原中国を治め千木が空高く届くほどの宮殿をたてろ」と言い放った。
こうして、スセリビメと地上へ戻ったオオナムチは名オオクニヌシと改める。
オオクニヌシはスサノオの太刀と弓矢を使い兄たちを追放し葦原中国を治めていくのであった。
オオクニヌシの国造り
兄たちを追放したオオクニヌシは国造りを進めていく。その最中小舟に乗った小さな神が現れた。
その小さな神の名は『スクナビコナ』といいなんと高天原のカムムスヒの子であると言う。スクナビコナはオオクニヌシと兄弟の契りを交わし二人で協力し国造りを進めていくのであった。
しかし、あるときスクナビコナは常世の国へ帰ってしまう。途方にくれたオオクニヌシであったがまたも協力してくれると言う神が現れたのである。
その神は『オオモノヌシ』と名乗り「私を東の山に祀れば国造りを手伝おう。」と告げる。オオクニヌシは大和の三輪山にオオモノヌシを祀り二人は協力して国造りを完成させる。
ここでオオクニヌシの国造りは完成を迎え葦原中国は豊かに栄えたのである。
アマテラスの地上平定計画
スクナビコナとオオモノヌシの協力もあり豊かな国を作ったオオクニヌシにある事件が訪れる。
突然、アマテラスが地上の支配権を主張し始めたのである。そして、アマテラスは自分の子であるアメノオシホミミ(スサノオとの誓約で生まれた神)こそが地上を支配するのに相応しいとする。
アメノオシホミミ地上の様子を見るとあまりの騒がしさに驚き逃げ帰ってしまう。困ったアマテラスは知恵の神であるオモイカネをはじめとする神々に相談し、使者としてアメノホヒ(この神もスサノオとの誓約で生まれた)を派遣する。
アメノホヒは地上に派遣されると、オオクニヌシや国の様子を観察していた。やがて居心地の良いこの国が気に入り高天原と連絡を取らず3年の月日が経ってしまっていた。
アマテラスはアメノホヒと連絡がつかなくなったことで次の使者にアメワカヒコという神を派遣することにした。
しかし、地上に派遣されたアメワカヒコはオオクニヌシの娘『シタテルヒメ』と結婚してしまう。アメワカヒコはあわよくば自分が地上の支配者になろうと企んでいたのである。
なかなか地上の支配権を得られないアマテラスはアメワカヒコを催促するため雉の姿の神であるナキメを派遣し催促させようとするがアメワカヒコはナキメを弓矢で射殺してしまう。
アメワカヒコの叛逆を知った高天原の神タカミムスヒがナキメを射殺した矢でアメワカヒコを射殺。
このように、アマテラスの地上平定計画は失敗が続いた。
国譲り
アメノオシホミミ、アメノホヒ、アメワカヒコと地上平定計画は失敗が続いた。痺れを切らしたアマテラスはとうとう、実力行使にでることにする。
武神タケミカズチ、天を飛ぶ船の神アメノトリフネを派遣し国譲りをせまる。タケミカズチは出雲の稲佐の浜に降りてオオクニヌシに国譲りをせまる。
オオクニヌシは「自分一人では決められない。息子のコトシロヌシとタケミナカタに聞いてくれ」とタケミカヅチに言う。タケミカズチがコトシロヌシに国譲りをせまるとコトシロヌシはあっさり地上の支配権を渡すことに同意する。
続いてもう一人の息子タケミナカタに国譲りをせまるとタケミナカタは拒否する。
タケミナカタはタケミカズチに力勝負を挑む。勝敗はタケミカヅチの圧勝。タケミナカタは恐れをなして科野(長野)の諏訪湖まで逃げるが追い詰められ降参する。
息子二人が敗れたことによりオオクニヌシは国を明け渡すことにする。
その時に、条件をつける。それは根の堅洲国から地上に戻る時にスサノオが言い放った「千木が空高く届くほどの宮殿」の建設だった。
こうして建設されたのが出雲大社である。
天孫降臨
国譲りの交渉がまとまるとアマテラスは息子のアメノオシホミミに地上の統治を命じる。しかし、アメノオシホミミは自分の息子のニニギを地上に派遣することを推薦するのであった。
アマテラスはニニギの地上統治を認めニニギを地上へ派遣する。
ニニギは地上に降りる際、五伴緒とその付き添いの神の八人を従えアマテラスから渡された三種の神器と共に地上に降りる。
ニニギが地上に降りると国津神の道案内にサルタビコが出向いていた。サルタビコの案内の元ニニギは日向の高千穂の峰を気に入りそこに宮を建て住居とした。
コノハナサクヤヒメとイワナガヒメ
地上の支配として君臨したニニギは笠沙の岬(鹿児島県野間岬)でコノハナサクヤヒメという美しい女性に出会う。
ニニギはコノハナサクヤヒメに一目惚れし結婚を申し込む。コノハナサクヤヒメもニニギを気に入り結婚の申し出を受け入れることにする。
そしてニニギはコノハナサクヤヒメの父オオヤマツミに結婚の許しを乞うため出向く。するとニニギとの結婚を快諾。さらに、イワナガヒメも妻にと差し出してきた。しかし、イワナガヒメの容姿はお世辞にも美しいとは言えずニニギは姉だけ送り返してしまう。
するとオオヤマツミは激怒。オオヤマツミはニニギに対し「貴方には失望した!私はイワナガヒメには岩のような強固に続く寿命を、コノハナサクヤヒメには栄華を願って差し出したと言うのに!イワナガヒメを返した貴方の子孫には神のような永遠の命はない」と告げるのであった。
このことから、ニニギの子孫(後の歴代天皇たち含む)は寿命という概念が生まれてしまったのである。
天孫の御子
ニニギと結ばれたコノハナサクヤはニニギとの間に御子を授かる。コノハナサクヤヒメがニニギに妊娠の報告と出産の許しを乞うとニニギは「一度の契りで身籠るはずがない、どこぞの国津神との間に授かった子ではないのか」と疑われてしまう。
コノハナサクヤヒメは悲しみ悔しがった。そして、「天孫の御子でないなら無事に産まれることはないでしょう」と出入り口のない産屋へ入り、自ら火を放ち無事に御子を出産する。
ニニギの疑いも晴れ、生まれた御子にホデリ、ホスセリ、ホオリと名付けた。
※ホデリ、ホスセリ、ホオリの兄弟は古事記と日本書紀で記載に違いがある。古事記ではホスセリは登場しなくなり、後のストーリーで書かれる山幸彦は兄のホデリ、海幸彦は弟のホオリであるが日本書紀では山幸彦はホスセリ、海幸彦はホオリとなっている。
海幸彦と山幸彦
ニニギとコノハナサクヤヒメから生まれたホデリ、ホオリの兄弟がいた。兄のホデリは海で魚を獲っていたため『海幸彦』と呼ばれ、弟のホオリは山で獣を狩っていたため『山幸彦』と呼ばれていた。
ある日、弟のホオリがたまには、道具を変えてみないかと兄のホデリに提案する。ホデリは最初は嫌がっていたが弟の願いに折れて道具をしぶしぶ交換することにした。
慣れない道具でいい結果が出るはずもなく肩を落とすホオリ。さらに兄から借りた釣り針もなくしてしまう。ホオリは釣り針をなくしたことを正直に話て謝るが兄は怒ってしまいホオリを許そうとしなかった。
ホオリが困って海岸で泣いているとシオツチという神が通りかかった。シオツチはホオリになぜ泣いているのか事情を聞くと竹で船を造り「この船で、ワタツミの宮殿に向かいなさい」と助言をくれる。
ホオリは助言に従ってワタツミに会うため宮殿に行くとワタツミの娘トヨタマビメが出迎えた。ホオリは一目見た瞬間にトヨタマヒメに恋をする。トヨタマヒメもホオリのことが好きになってしまう。
トヨタマヒメの後に出てきたワタツミもホオリがアマテラスの子孫であることに気づきホオリをもてなし、二人の関係を祝福することにした。
トヨタメヒメと結婚し幸せに過ごしていたホオリであったが3年の月日が経ちふと自分がここにきた理由を思い出す。
ホオリはホデリとの諍いをワタツミに相談することにした。
ワタツミはホオリの力になるため魚たちに針を探させる。針が見つかりホオリは帰郷するとワタツミたちに告げる。
ワタツミは帰郷するホオリに呪文(田が不作になり3年で不作となる呪文)を授け懲らしめるようにと助言する。そして、兄が攻めてきた時のために潮の干潮を自在に操る塩盈珠と塩乾珠を授ける。
ホオリは地上に帰るとホデリに針を返すことにする。返す時にワタツミに教えられた呪文を唱えると本当にホデリは困窮する。困窮したホデリはホオリを襲いはじめた。
ホオリはワタツミに貰った塩盈珠と塩乾珠で撃退する。負けたホデリは守護人としてホオリに従うことを誓う。
ホオリとトヨタマヒメの御子
ホデリを従えたホオリは地上の支配者として君臨する。
そこにワタツミの子であり、海の国で結婚したトヨタマヒメが訪れやがて子を授かる。
妊娠したことに喜んだホオリは産屋を建て始める。しかし、産屋が完成する前にトヨタマヒメが産気付き「出産の際、私は本来の姿に戻ってしまうので決して覗かないように」と告げて作りかけの産屋で出産の準備に入ります。
ホオリは好奇心に負け壁の隙間から出産の様子を覗いてしまう。そこで見たのは大きなワニの姿のトヨタマヒメだった。
ホオリに裏切られ本当の姿をみられたトヨタマヒメは出産した子供を置き去りにして海へ帰ってしまう。
そして、海の国と地上の国境を閉ざしてしまう。
生まれた赤子はウガヤフキアエズと名付けられた。海へ帰ったトヨタマヒメ出会ったが生まれた子が心配になり妹のタマヨリヒメにウガヤフキアエズを育てるようにお願いする。
やがて成長したウガヤフキアエズはトヨタメヒメの妹で自分を育ててくれたタマヨリヒメと恋に落ち結ばれ四人の子をもうける。
ニニギが山の神の娘と結婚しホオリが海の神の娘と結婚したことにより天孫は山と海の力を手に入れ地上すべてを支配する資格を得たことになる。
神々と人間を結ぶニニギからウガヤフキアエズまでを『日向三代』と呼ぶ
・イツセ
・イナヒ
・ミケヌ
・イワレビコ(後の初代天皇)
ウガヤフキアエズとトヨタマヒメの子から初代天皇が誕生する
神々の時代から人の時代へ
高天原から追放されたスサノオが地上で活躍しその子孫が葦原中国の支配者として君臨。
そして、アマテラスは自分の血筋こそ葦原中国の支配者に相応しいと地上の支配権を奪うため使者をおくり、葦原中国の支配権であるオオクニヌシから支配権を譲らせる(国譲り)。
そして、アマテラスの孫にあたるニニギが天孫として地上を支配するため降臨。そして、ホオリ(海幸彦)、ウガヤフキアエズと日向三代を経て初代天皇として日本の正当な支配者として君臨するイワレビコが誕生した。
次からは古事記の中巻へ突入します。イワレビコが天皇として日本を支配する過程を見ていこうと思います。
コメント