お待たせしました! 今回は、理不尽すぎる「弟の逆襲」と、日本の昔話でおなじみ「絶対に見てはいけない(見るなよ? 絶対見るなよ?)」というお約束が再び登場です。
あのイケメンの山幸彦が、最後の最後でとんでもないミスを犯します。
ひこまる「お師匠! 前回は、釣り針をなくした弟の山幸彦が、海の神様に『魔法の玉(潮満珠・潮涸珠)』と『呪いの言葉』をもらって地上に帰ってきましたね。 でも、元はと言えば山幸彦が悪いのに、お兄ちゃんの海幸彦さんが可哀想になってきました……。」



「ふっふっふ。神話の世界に『公平さ』を求めてはいかんぞ。 ここから、海の神様の入れ知恵による、弟のえげつない逆襲が始まるんじゃ!」
1. 呪いの釣り針と、没落する兄



「地上に戻った山幸彦は、兄に釣り針を返す時、海の神様に言われた通りにうしろ手で渡し、 『これは貧乏になる針だ、愚かになる針だ!』と呪いをかけたんじゃ。」



「うわぁ……性格悪っ! なくした釣り針を返してもらっただけなのに、なんで呪われなきゃいけないんですか!」



「さらに山幸彦は、兄が高い土地に田んぼを作れば、自分は低い土地に作り、兄が低い土地に作れば、高い土地に作った。 海の神様が水を操って山幸彦をサポートしたため、弟は大豊作、兄はどんどん貧乏になってしまったんじゃ。」



「完全に水路を握られてるじゃないですか! 海の神様を味方につけたチートプレイですよ、それ!」
2. 魔法の玉で「溺死」の危機!? 兄の降伏



「ついに貧しさに耐えかね、怒り狂った兄の海幸彦は、武器を持って弟を襲撃した! ……が、山幸彦は待ってましたとばかりに、海の神様にもらった『潮満珠(しおみつたま)』をポーンと投げたんじゃ。」



「あ! 海の水が溢れ出す魔法の玉ですね!」



「その通り。あっという間に周りは大洪水になり、海幸彦は溺れそうになってしまった。 『助けてくれぇぇ!』と命乞いをする兄を見て、今度は水を引かせる『潮涸珠(しおひるたま)』を投げて命を助けてやったんじゃ。」



「マッチポンプ(自分で問題を起こして自分で解決して恩を着せる)ですね……。 お兄ちゃん、完全に心を折られちゃったんじゃないですか?」



「うむ。すっかり恐れをなした海幸彦は、 『これからは、私はあなたを守るための犬(ボディーガード)になって、永遠にお仕えします!』と降伏したんじゃ。 これが、後の南九州に住む『隼人(はやと)』と呼ばれる、天皇をお守りする人たちのルーツと言われておる。」
3. 海からやってきた身重の妻



「なるほど、ここで服従の歴史が生まれたんですね。 でも、山幸彦さんは竜宮城に奥さん(トヨタマヒメ)を残してきたんですよね?」



「そうそう。兄を屈服させて平和になった頃、海の底からトヨタマヒメがやって来たんじゃ。 しかも、お腹の大きい身重(妊婦)の姿でな。」



「おおっ! 赤ちゃんが産まれるんですね! お父さんのニニギ様(炎の中で出産)みたいに、揉めないといいですが……。」



「山幸彦は大慌てで、海辺に『産屋(うぶや)』を建て始めた。 屋根を鵜(う)という鳥の羽で葺(ふ)こうとしたんじゃが、屋根が完成する前に、トヨタマヒメが産気づいて小屋に入ってしまったんじゃ。」
4. フリじゃない!「絶対に見てはいけない」



「小屋に入ったトヨタマヒメは、夫の山幸彦にこう言った。 『海の国の者は、出産する時に自分の「本当の姿」に戻ります。恥ずかしいので、絶対に中を覗かないでくださいね!』とな。」



「出たーっ!! 『鶴の恩返し』的なやつ! 絶対に見るなよ? 見るなよ!? ってダチョウ倶楽部さんのフリじゃないんだから!」



「そう……日本の神話や昔話において『見るな』は『見ろ』のサインじゃ。 気になった山幸彦は、こっそりと産屋の中を覗き込んでしまった!! するとそこには、美しい妻の姿はなく……」



「な、何がいたんですか!?」



「巨大な八尋和邇(やひろわに:巨大なサメ、または竜)が、のたうち回りながら出産している姿じゃったーっ!!」
5. 逃げる夫と、悲しみの「海神の娘」



「サ、サメー!?!?(※または竜) あの絶世の美女が、実は巨大な海のバケモノだったんですか!?」



「それを見た山幸彦は、あまりの恐怖に全速力で逃げ出してしまった! それを見られたトヨタマヒメは、深く傷つき、恥ずかしくてたまらなかったんじゃ。」



「奥さん、可哀想……。 あんなに『見ないで』って言ったのに、覗かれた挙句にドン引きして逃げられるなんて。」



「彼女は産まれたばかりの赤ちゃんを残し、 『こんなに恥ずかしい思いをしたからには、もう陸にはいられません』と、海と陸の境界を完全に塞いで、海の底へ帰ってしまったんじゃ……。」
まとめと次回予告



「悲しいお別れですね……。残された赤ちゃんはどうなっちゃうんですか?」



「トヨタマヒメもそこは心配じゃったんじゃろうな。 海の底に帰った後も、夫と子どもへの未練が断ち切れず、自分の妹の『タマヨリヒメ』を乳母(子育て役)として地上へ派遣したんじゃよ。」



「よかった! 妹さんが育ててくれるんですね。」



「そして、この産まれた赤ちゃんこそが、次回の主役。 名前を『ウガヤフキアエズ』(産屋の屋根を葺き終わらないうちに産まれた、という意味)という。 次回、【最終回】ついに神の時代が終わり、人間の時代へ! 初代・神武(じんむ)天皇の誕生じゃ!」



「えっ!? 次で最終回ですか!? いよいよ『日本の歴史』につながるんですね!」



産屋に置き去りにされた赤ちゃん(ウガヤフキアエズ)が成長し、ついに初代・神武(じんむ)天皇が誕生するぞ!
神話の時代が終わり、人間の歴史が始まる感動のフィナーレじゃ。



イザナギさんやアマテラスさんたちから続いた血脈が、どうやって天皇に受け継がれたのか、最後まで見届けます!
▼ この物語の続きはこちら
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【最終回】ついに神の時代が完結!初代・神武天皇の誕生(次のお話)
残された赤ちゃんの成長と、日本の歴史の幕開けとなる感動のフィナーレ。 -
【第3ステージ/第4話】浦島太郎のモデル!?海幸彦と山幸彦の兄弟喧嘩(前のお話)
釣り針をなくして海の底へ。竜宮城伝説のルーツをおさらい。 -
【復習】日本神話の全体像(3つのステージ)
「あれ? 今どこの話だっけ?」と迷ったらこちらに戻りましょう。


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