国会の“最初の仕事”が、総理を決めること
選挙のあと、ニュースで必ず出てくる「首班指名」。
これは“イベント”というより、国を動かすための最初のスイッチです。
日本国憲法は、内閣総理大臣(=総理)を国会が指名すると決めたうえで、その指名を**「他のすべての案件に先だって」**行うと明記しています。
なぜそこまで「最初」にこだわるのか。この記事では、その理由と仕組みを流れで整理します。
3行でわかる結論
- 首班指名=国会が、国会議員の中から内閣総理大臣を指名すること。
- 「最初にやる」のは、内閣(行政のトップ)を決めないと、予算や政策の判断主体が定まらず国が動きにくいから。
- 衆参で結果が割れても、両院協議会と期限(10日)などで決着するルールが用意されている。
まず首班指名とは?
総理は「誰がなるか」より先に、「誰が決めるか」が制度で決まっています。
憲法67条は、内閣総理大臣を国会の議決で指名すると定めています。
これは、日本が議院内閣制(内閣が国会の信任に基づいて成り立つ仕組み)を採用していることの中核でもあります。
なぜ“最初に”総理を決めるのか
総理が決まらない国は、ハンドルのない車みたいなものです。
憲法67条は、首班指名を**「他のすべての案件に先だって」**行うと、はっきり書いています。
この「最初に」が大事な理由は、主に3つです。
1)内閣を作らないと、行政がスタートできない
総理が決まらないと、内閣(行政の中心)が組めず、政策の方針も決めにくい。
議院内閣制では、内閣は国会の信任を前提に動くため、まず“内閣の核”を確定させる必要があります。
2)予算や重要案件は「内閣が責任を持って出す」前提がある
国会は議論の場ですが、予算の編成や外交の実務など、行政側の判断と責任が不可欠な分野が多い。
だから、先に総理(=行政の代表)を確定させ、政治の意思決定を前に進める設計になっています。
3)ねじれや対立があっても、国が止まらないための“最短ルート”
首班指名には、衆参不一致の調整(両院協議会)や期限(10日)など、決着の仕組みが置かれています。
どう動く?首班指名の流れ
首班指名は「投票」よりも、「決着の仕組み」を知るとニュースが読めます。
1)衆議院と参議院で、それぞれ指名を議決する
両院で議決したら、互いに通知します(国会法)。
2)同じ人なら、その人が総理になる
両院一致なら話は早い。ここで首班指名は確定です。
3)違う人になったら、両院協議会へ
首班指名が一致しないときは、参議院が両院協議会を求める(国会法)とされています。
4)それでも一致しない/期限までに参院が議決しないなら「衆議院の議決」が国会の議決に
憲法67条2項は、両院協議会で一致しない場合や、衆院議決後(休会期間を除いて)10日以内に参院が議決しない場合、衆議院の議決を国会の議決とすると定めています。
※各院で過半数に達しない場合に決選投票を行う、という説明も一般的にされています。
何が変わる?首班指名が“政治の空気”を決める
首班指名は、政権の「顔」だけでなく、国会運営のルールまで決めます。
- 総理が決まる=内閣が組める(行政が動き出す)
- どの勢力が主導権を握るかが見え、連立・協力関係の形が固まる
- 以後の予算・法案は、首班指名で固まった政治地図の上で進む(ねじれなら交渉が増える)
誤解されやすい点
「最初に総理を決める=何でも総理が決める」ではありません。
- 総理は国民の直接選挙で選ばれる?
→ 直接ではなく、国会の議決で指名されます。 - 衆議院がいつも勝つ?
→ 首班指名は最終的に衆院決着のルールがありますが、通常は両院での審議・合意形成が前提です。
まとめ|首班指名は「国を動かす順番」を決める制度
首班指名は、国会が総理を指名し、内閣(行政)をスタートさせるための最初の手続きです。
だから憲法は、これを他の案件より先に行うと定め、衆参が割れても決着できる仕組み(両院協議会・期限・衆院決着)まで用意しています。
次に読むなら
「ねじれ」とセットで理解したい人へ
「仕組み」をもう一段クリアにしたい人へ
FAQ
Q1. 首班指名はいつ行われるの?
A. 原則として、国会が開かれたら最優先で行われます(憲法67条)。
Q2. 衆参で違う人を選んだらどうなる?
A. 両院協議会で調整し、それでも一致しない場合などは衆議院の議決が国会の議決になります。
Q3. なぜ“最初に”総理なの?
A. 議院内閣制のもとで、内閣(行政)を成立させないと国の意思決定が進みにくいからです。
参考文献・資料
- 日本国憲法(第67条)
- 首相官邸「現行憲法下の内閣制度(議院内閣制の説明)」
- 国会法(第86条など:指名議決の通知・両院協議会)
- 参議院「両議院の関係:国会の基礎知識(首班指名の調整・10日ルール等)」

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