銀行は、ふだん“止まらない”ように見えます。
ATMも振込も動き、預金はいつでも引き出せる。
けれど、ある条件がそろうと――
銀行は突然、止まります。
人々が同時に「預金を引き出そう」と動くことで、
銀行が現金を用意できなくなる現象。
それが 取り付け騒ぎ(とりつけさわぎ) です。
この記事では、
取り付け騒ぎの仕組みと、なぜ起きるのか、なぜ止まるのか。
そして1927年の金融恐慌など歴史上の流れともつなげて整理します。
取り付け騒ぎとは何か
取り付け騒ぎとは、
銀行が危ないという不安が広がり、預金者が一斉に引き出しに走ることで、
銀行が資金不足に陥る現象です。
ポイントは、最初から銀行が倒産している必要はないことです。
「倒産するかもしれない」という疑いだけで、現実が動き出します。
なぜ銀行が止まるのか|銀行の仕組みがカギ
銀行は、預金をそのまま金庫に積んでいるわけではありません。
- 預かったお金の一部は手元に残す
- 残りは企業や個人へ融資する
- 融資の利息で利益を出す
この仕組みがあるから、社会のお金は回り、経済も動きます。
ただし裏返すと、
預金者が一斉に引き出すと、手元の現金が足りなくなる。
これが「銀行が止まる」理由です。
つまり、取り付け騒ぎは銀行の“欠陥”というより、
銀行が社会の資金循環を担う仕組みそのものが持つ弱点でもあります。
取り付け騒ぎが起きる条件|3つが重なると危ない
取り付け騒ぎは、次の3つが重なると起きやすくなります。
① もともと不安の種がある(弱っている銀行・景気悪化)
銀行の経営が苦しい、企業倒産が増えている、景気が悪い。
こうした土台があると、不安は広がりやすくなります。
👉 1920年代の不安の流れは
「戦後恐慌(1920)とは?なぜ不況になったのか」
② 情報が不安を増幅する(噂・報道・政治の発言)
取り付け騒ぎは、数字よりも「空気」で動きます。
「危ないらしい」という一言が、不安を連鎖させます。
このとき、真偽よりも先に行動が走ります。
「念のため引き出しておこう」と。
③ “先に動いた人が得をする”構造がある
取り付け騒ぎが怖いのは、預金者の行動が合理的に見える点です。
- 何も起きなければ、引き出しても大損はしない
- もし銀行が本当に危なければ、早い者勝ちになる
だから人は「念のため」を選びます。
この判断が集まると、本当に銀行は現金不足になります。
なぜ「不安が現実になる」のか|心理と仕組みの連鎖
取り付け騒ぎは、ざっくりこう進みます。
- 不安が広がる
- 引き出しが増える
- 銀行の現金が減る
- “やっぱり危ない”と見える
- さらに引き出しが増える
こうして不安が自己増殖し、
「本当は耐えられたかもしれない銀行」まで倒れてしまうことがあります。
1927年の金融恐慌|取り付け騒ぎが全国に広がった例
日本で有名なのが、1927年の金融恐慌です。
このとき、銀行はすでに体力を落としていました。
- 戦後の景気後退(戦後恐慌)
- 関東大震災の後処理
- 震災手形の問題
こうした弱さの上に不安が乗り、
取り付け騒ぎが全国規模で広がったのです。
👉 前後の流れはここで整理できます
「金融恐慌とは?1927年に大正経済が揺れた理由」
「震災手形とは?なぜ金融不安の火種になったのか」
取り付け騒ぎが社会に与える影響
取り付け騒ぎは、銀行だけの問題では終わりません。
- 銀行が貸し出しを絞る(貸し渋り)
- 企業の資金繰りが詰まる
- 倒産が増え、失業が増える
- 景気が一気に冷え込む
つまり「金融の停止」は、そのまま「経済の停止」になりやすいのです。
どうすれば防げるのか|“信用”を支える仕組み
取り付け騒ぎを防ぐ鍵は、
「銀行は守られる」という信用を社会が持てるかどうかです。
現代では国や中央銀行が、
- 預金保険(一定額まで預金を守る)
- 最後の貸し手(銀行に資金を供給する)
- 銀行監督(無理な経営を防ぐ)
などの仕組みで、信用の崩壊を止めようとしています。
歴史の中でも、危機のあとには制度が整えられることが多く、
1927年の金融恐慌後には銀行制度の見直しも進みました。
👉 制度面までつなぐなら
「銀行法(1927)とは?恐慌後に何が変わった?」
まとめ|取り付け騒ぎで止まるのは「現金」ではなく「信用」
・取り付け騒ぎは、預金者が一斉に引き出しに走る現象
・銀行は預金のすべてを現金で持たないため、同時引き出しに弱い
・不安が広がると、合理的な行動が連鎖して不安が現実になる
・結果として貸し渋り、倒産、失業など社会全体に波及する
・防ぐには、預金保護や資金供給など“信用を支える制度”が重要
取り付け騒ぎを理解すると、
1920〜30年代の日本で「なぜ経済不安が政治や社会を揺らしたのか」が見えやすくなります。

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