「日本の子ども」が学んだ国の務め
続く「日本の子ども」は、日本を心から愛し、日本人としての誇りを失わないように教えます。神の系統を受けた天皇が治め、永遠に栄える国は日本のほかにないとし、日本は世界の人々を正しく導く務めを持つと説明しました。
さらに、父・兄・祖父たちが戦場で戦い、戦場に出ない者も心を一つにして国を守ること、神の教えに従って世界の人々を幸福にすることが日本人の務めだと説きます。国の優越性、戦争への協力、世界を導く使命が一つの文章に組み込まれているのです。
昭和17年の教材として読む
この第五期修身書が発行されたのは昭和17年(1942年)です。太平洋戦争開戦直後という時代を考えれば、国体の優越、国民の一致、祖国防衛、世界を導く使命が強調された理由が見えてきます。
ただし、「日本は世界の幸福のために戦っていた」という説明は、教材と本書著者が示す戦争観です。実際の戦争では、日本軍の占領と統治によって各地に大きな被害が生じました。戦時中に児童へ何が教えられたかという史実と、その教えを現在も正しいと評価するかは分けなければなりません。
本当の勉強は、暗記だけではない
このような時代に「日本の子ども」の務めとして示されたのが、一生懸命に勉強することでした。ただし、勉強は物事を覚えることだけではありません。心を正しく美しくすること、よく考えること、工夫すること、身体を強く鍛えることまで含みます。
- 知識を身につける
- 自分の頭で考える
- よりよい方法を工夫する
- 心を正しく美しく磨く
- 身体を丈夫に鍛える
- 学んだことを行動へ移す
知識、思考力、工夫、精神、身体を一体として育てる教育観には、現代から見ても考える価値があります。一方、その目的は「お国のために働ける強くたくましい国民」になることに置かれていました。人間を総合的に育てる考え方と、戦時国家が求める国民の形成が重なっています。
「口舌の徒」とは
口舌の徒とは、口では立派なことを言っても実行が伴わない人を指します。本書は「頭でっかちの口舌の徒」では、戦争という非常時に役に立たないと述べます。だからこそ、知識だけでなく心身を鍛え、実際に国のために働く人を育てる教科として修身を位置づけました。
春から夏へ|農作業と皇室行事を同じ季節に置く
4月3日の神武天皇祭の頃に桜が咲き、4月29日の天長節には若葉が風にそよぐ。天長節は当時の天皇の誕生日を祝う日で、昭和前期の4月29日は昭和天皇の誕生日でした。
八十八夜を迎える頃には、農家の仕事が忙しくなります。八十八夜は立春から数えて88日目で、おおむね5月初めです。苗代を作り、蚕を飼い、麦を取り入れ、田植えをし、田の草を取り、害虫を除く。日本の四季は眺める景色だけでなく、農作業と生活の時間でもありました。
教材では、祝日に宮中で儀式が行われ、学校でも式典があり、祭日には宮中三殿で祭祀が行われると説明します。宮中三殿は、賢所・皇霊殿・神殿の総称です。祭日は授業のない日でしたが、単なる休日ではなく、慎みの心で過ごす日と教えられました。
本書は、皇室行事と国民生活が密接に結びつくことで、天皇と国民が一体となる国柄が形づくられたと読み解きます。これも教材の構成から導いた著者の評価です。実際の受け止め方には地域、家庭、個人による違いがあった可能性を残して読む必要があります。
日本の秋|澄んだ空と清らかな心
秋風にすすきの穂が白く光り、なでしこ、女郎花、桔梗が咲きます。青く晴れ渡る空でモズが鳴き、夜の草むらでは松虫や鈴虫の声が響く。稲穂は金色の波となり、柿とみかんが色づき、山々は黄や紅に染まります。人々は額に汗を浮かべて収穫に励みます。
夜空に鏡のような月が昇ると、心の底まで見通され、隠し事ができないように感じると教材は描きます。美しい秋の月のように、人の心も純粋で清潔でなければならないという教えです。秋は読書や工夫、身体の鍛錬にもよい季節とされました。
本書は、このような美しい四季を持つ国は世界にも例がなく、日本人は祖国を誇り、愛する心を深めるべきだと述べます。これは客観的な自然地理の比較ではなく、日本の自然を特別なものとみなす著者の価値判断です。教材から確認できるのは、秋の自然美が清らかな心と祖国愛へつなげられたことです。

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