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修身が描いた「美しい日本」とは?四季・皇室行事・郷土愛から読む愛国心|第3章

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郷土愛|忘れられない故郷から祖国へ

第3章最後の大きなテーマは郷土愛です。本書は、愛国心の根本には家族愛があり、それが広がると郷土愛になると説明します。故郷の山川と人々を愛することが郷土愛であり、「郷土愛のない愛国心はあり得ない」とまで述べます。

国は大きく、日常生活では実感しにくいものです。一方、家族、近所、村や町、山、川、学校、友人には具体的な記憶があります。身近な対象への愛着を少しずつ広げ、祖国への愛へ導く。これがこの章の教育的な道筋です。

小太郎の村はどのような郷土だったのか

第四期の4年生用修身書「我が郷土」には、小太郎の住む山奥の村が登場します。きれいな川が北から南へ流れ、春にはれんげ草と菜種の花、青い麦田と桑畑が広がります。夏には若鮎が泳ぎ、山には杉と松が茂り、秋には稲穂が黄金の波になります。

戸数は300、人口は約1500人で、多くは農家です。商店、役場、学校、郵便局があり、山の麓には天神様、すなわち菅原道真を祭る氏神があります。祭りの日には参詣人でにぎわい、青年団が境内を毎日掃除します。忠魂碑も見える場所に立っていました。

川沿いの道路には乗合自動車のりあいじどうしゃ、現在の路線バスに近い車が走ります。小道にはでこぼこがなく、紙くずや石も拾われ、道しるべが整っています。養蚕が盛んで、よい梨を外へ売り、道端の手が届く場所に実った梨も誰も盗みません。納税を知らせる旗が立てられても、期限に遅れる者はいないとされます。

村の姿教えようとした徳
四季の自然と農作業故郷への愛着、勤労
青年団による清掃奉仕、公共心
道路・道しるべ・交通協力、生活改善
梨を盗まない正直、他人の所有物の尊重
期限内の納税公民としての責任
氏神・忠魂碑地域の信仰と国家の記憶

この村は、美しく、清潔で、勤勉で、公共心と秩序が守られた模範的共同体として描かれています。ただし、一つの教材に示された理想像であって、当時のすべての農村がこのようだったことを証明するものではありません。子どもに自分の村を重ねさせ、「自分の村や町も美しくあれ」と願わせるための教材です。

南米から帰った人が語った望郷

郷土を離れて南米で農業をしていた人物が、久しぶりに帰郷し、小太郎たちの学校で話をします。どこへ行っても、自分の郷土、友人と登った山、一緒に泳いだ川を忘れられなかった。遠くから村の繁栄を祈り、帰ってみると、村長、校長、青年団の努力で村は見違えるほど栄えていたと語ります。

話す人と校長の目には涙が光り、小太郎たちは、大きくなったら村を日本一よい村にしようと決心します。故郷を離れて初めて、当たり前だった山や川、人々のつながりの大切さに気づく。郷土愛は理屈ではなく、幼い頃の記憶と日常の感覚から生まれるという話です。

郷土愛を「郷土詩」と呼ぶ意味

本書は、郷土愛を一人ひとりの「郷土詩」のようなものと表現します。少年少女期の思い出と結びついた感情は、成長するにつれて純化され、強い望郷ぼうきょうの念となり、やがて祖国愛へ昇華されるという説明です。

郷土の山や川を懐かしむ気持ちと、自分の村をよくしたいという行動を結びつける点は理解しやすいでしょう。しかし本書は、さらに祖国を守るためなら自分のすべてを捧げても悔いないという自己犠牲へ進みます。ここで郷土への素朴な愛着が、戦時の国家道徳へ組み替えられます。

危急存亡と自己犠牲|愛国心はどこまで求められたのか

危急存亡ききゅうそんぼうとは、国が存続するか滅びるかという重大な危機です。本書は、祖国が敵に踏みにじられる危機に直面すれば、郷土愛を持つ人は強い愛国者となり、祖国防衛のために身を捧げても悔いない自己犠牲の精神を持つようになると述べます。

そして「我が郷土はそのまま我が祖国」であり、この感情を育てるために修身教育が必要だったと結論づけます。国民に愛国心がなければ国家の要件を満たさず、戦争が始まれば滅亡への坂道を転げ落ちるという強い因果関係まで示します。

ここは修身教材そのものというより、本書著者の規範的な主張が強く表れた部分です。郷土愛が必ず祖国愛へ進み、祖国愛が必ず自己犠牲へ至るわけではありません。故郷を大切にすること、国の存続を願うこと、政府の戦争政策を支持すること、個人の命を国家へ捧げることは、それぞれ分けて検討できます。

第3章から見える修身の二つの顔

第3章には、二つの顔があります。一つは、自然を愛し、明るく朗らかに生き、心を磨き、身体を鍛え、家族や郷土を大切にする道徳教育です。もう一つは、天皇への忠誠、国家への奉仕、祖国防衛、戦争への備え、自己犠牲を求める国家教育です。

春の描写だけを読めば穏やかですが、途中から「現人神」「夷狄を撃攘する」「危急存亡」「祖国のために身を捧げる」という強い言葉が現れます。自然から学ぶ心のあり方と、国家が求める戦時の国民像が、一つの教材の中で切れ目なくつながっていることが重要です。

第3章が描いた「美しい日本」とは

第三章の「美しい」は風景だけを指しません。美しい四季、美しい村、清潔な道、働く人々、盗みをしない人々、納税する人々、故郷を愛する人々、祖国を守る人々まで含みます。自然、人間、共同体、皇室、国家を一つにまとめた日本の理想像です。

その理想像の中で、子ども自身も春のように朗らかに、秋のように澄み、冬のように強くなることを求められました。自然の中から生き方を学ぶ発想、家族や郷土を大切にする教えには、現在にもつながる問いがあります。一方、昭和17年という戦時下では、その愛情が祖国防衛と自己犠牲へ強く結びつけられました。

第3章「美しい日本」は、日本の自然の美しさを知る章であると同時に、その日本を愛し、守る人間を育てる章でした。どの徳目を今に生かせるのか。身近な愛着が国家への服従へ変わる境目はどこにあるのか。両方を考えることで、この章の全体像が見えてきます。

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修身が描いた「よい日本人」と、男女・国民に求められた務めを読み解きます。

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