1873年の徴兵令から始まり、免役の縮小や兵役区分の改正を重ねました。この記事では、法令そのものではなく、制度が日本社会と戦争をどう変えたのかを見ていきます。
徴兵制をひとことで表すと
徴兵制は、一定年齢の男子に兵役を負わせ、現役を終えた後も予備役などとして登録し、必要なときに大規模な軍隊を組織できるようにする制度です。身分や藩ではなく、国家が国民を直接兵士として把握する仕組みでした。
法令を知りたい
徴兵令の記事で、1872年の徴兵告諭、1873年の公布、免役、血税一揆を解説します。
制度の影響を知りたい
この記事で、改正、師団制、戦時動員、国民意識、家庭への負担を長期的にたどります。
ひこまる徴兵令が出ても制度は完成していない……。では、どうやって全国で動く仕組みになったんでしょう?
藩の軍隊から、国家の軍隊へ
江戸時代には各藩が軍事力を持ち、武士が戦う役割を担いました。明治政府は廃藩置県で藩を廃止しましたが、全国を守り、国内の反乱にも対応する統一軍が必要でした。
1871年には東京・仙台・大阪・熊本に鎮台を置き、1873年には名古屋・広島を加えます。そこへ全国から集めた兵士を配置し、同じ訓練と命令系統で動かすことが、徴兵制の出発点でした。
徴兵制は、どのように整えられたのか
「全国募兵」の理念を示し、武士だけが戦う考えを改めました。
満20歳の男子を対象とし、現役3年を基本とする制度を始めました。
徴兵で組織された政府軍が士族軍を破り、全国軍としての力を示しました。
現役・予備役・後備役などの仕組みを整理し、長期的な動員体制を整えました。
鎮台を師団へ改め、免役を大幅に縮小して制度を全国民的なものへ近づけました。
最初から「平等な国民皆兵」だったわけではない
開始当初は、一家の主や跡継ぎ、官吏、一定の学生などが兵役を免除されました。代人料を納めることで免役される規定もあり、裕福な家ほど回避しやすいという不公平がありました。
政府は改正を重ね、1889年の改正では免役を大幅に縮小しました。「国民皆兵」は最初から実現した状態ではなく、制度を広げる政府と、兵役を避けようとする人々の動きのなかで形成された理念でした。
兵営は、異なる地域の人を「同じ国民」にしたのか
兵営には、方言も生活習慣も異なる若者が集められました。彼らは共通の号令、時間、制服、規律のもとで生活し、読み書きや衛生について教えられることもありました。除隊した兵士が学んだことを村へ持ち帰る面もあります。
一方、軍隊生活は自由な教育ではなく、命令に従うことを求める場でした。1882年の軍人勅諭は、軍人に天皇への忠節と服従を求めます。徴兵制は地域を越えた国民意識を育てると同時に、国家への忠誠を身体に覚えさせる制度でもありました。
家族と地域は、兵役をどう受け止めたのか
兵役は本人だけの問題ではありません。農家や商家では、若い働き手が数年間いなくなることで、生産と家計に影響が出ます。入営する本人には、慣れない共同生活、厳しい訓練、病気や事故の不安がありました。
それでも制度が定着すると、入営・除隊は地域社会の重要な出来事になりました。兵士の家族を地域が支える仕組みも広がり、国家の軍事制度が村や家庭の日常へ組み込まれていきます。
日清・日露戦争で、徴兵制はどう働いたのか
日清戦争では、師団を中心とする全国軍が朝鮮半島と中国大陸へ動員されました。戦争の経験を受けて制度はさらに改正され、予備役や補充兵役の仕組みが整えられます。
日露戦争では、現役兵だけでなく予備役・後備役まで大規模に動員されました。徴兵制は大国ロシアと戦う兵力を可能にしましたが、多数の戦死傷者を生み、家族と地域へ長期の負担を残しました。
徴兵制を支えた、税・教育・産業
大規模な軍隊は、徴兵だけでは維持できません。地租改正による税収、学制による基礎教育、鉄道・海運による輸送、工業による武器・被服・食料の供給が必要でした。
徴兵制は、富国強兵の「強兵」だけを切り取った制度ではありません。「富国」が生み出す財源と産業の上に成り立ち、国家が人・金・物を全国から集める仕組みの一部でした。
徴兵制が残したもの
徴兵制は、武士の軍事的特権を終わらせ、全国統一の軍隊を生みました。外国の侵略に備え、国内の統一を守るという明治政府の目的に大きく貢献しました。
同時に、国家が国民を登録し、訓練し、戦争へ送り出す動員体制をつくりました。国民としての権利が十分に広がるより先に、兵役という義務が課された点は重要です。徴兵制の歴史は、「国を守るのは誰か」と「国家は個人に何を求められるのか」を同時に問いかけています。
徴兵制の前後を、さらに読む
参考資料
- 大石学監修『一冊でわかる明治時代』河出書房新社、2020年、56〜59頁・91頁・163〜166頁・209〜216頁。
- 国立公文書館 アジア歴史資料センター「徴兵令」Ref.C09060002500、徴兵令改正関係資料。
- 国立公文書館「日本のあゆみ」明治6年。


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